Tokyo Green

No Mountain , No Life.

『ギャップ』 – 三俣山荘登山道整備(道直し)に参加して –

約8分

こんにちは、登山サークルTokyo Greenです!

2023年もはや1ヶ月が経過し、3年間続いた新型コロナウイルス問題も、どうやら「慣れと飽きと人々の精神的な限界」によって終わろうとしていると感じます。終われば、2019年以前の「元の通りの生活」へと戻れる気もしますが、果たしてそうなのか?という疑問を持ちながら、私としては、サークルの運営や、個人的な都合等々とのバランスを見直しながら日々過ごしています。

さて私たちは昨年秋、北アルプスの『三俣山荘』という山小屋さんで、登山道整備にボランティアとして参加しました。
大分日が空いてしまいましたが、このブログでは、参加動機、道直しの模様、感想、総括を書いていこうと思います。

文章がとてつもなく長くなるので、数回に、数ヶ月に分けてお送りします。

三俣山荘さん

『三俣山荘』をみなさんはご存じですか?
北アルプスといえば、上高地や槍ヶ岳、白馬、立山などといった数多くの『有名観光地』を擁するエリアだというのはお分かりだろうと思いますが、三俣山荘も北アルプスにあり、富山県に流れる黒部川の源流である日本百名山の鷲羽岳近く(黒部源流)、お隣三俣蓮華岳との鞍部にある山小屋です。
高瀬ダム、新穂高温泉という登山口から歩くと2日目の行程で到着する場所、言ってしまえば奥地にあります(人によっては初日で着きます!)。
戦後間も無く、伊藤正一氏(現在のオーナーの伊藤圭さんのお父さま)が権利を買い取り、山賊・猟師との交わりを経ながら開拓を続け、北アルプス黒部源流の魅力を日本登山界へと発信され、数多くの登山者の憧れの縦走路を切り開き、現在に至ります。

三俣山荘
三俣山荘

三俣山荘が昨年冬にオープンされた長野県大町市にある「三俣山荘図書室」へと伺い、お話しをさせて頂いた結果、サークルとして登山道整備に参加させていただくこととなりました。

参加のわけ
なぜ登山サークルが、私が三俣山荘さんの登山道整備に参加するのか、しようと思ったのか。

三俣山荘のお隣には「日本最後の秘境」と紹介される「雲ノ平」があります。
この雲ノ平も伊藤正一氏が道を作り開拓し、登山客を導いたことで人気となり、今では一度は訪れたい憧れの地という評判となった場所です。
私が登山サークルを設立した理由は、その雲ノ平に2015年に初めて仲間6人で訪れ、晴れた山小屋から見る圧倒的な展望に心惹かれたことで「もっと多くの人とこの場所に訪れてみたい」と30歳手前で大学生気分になり、元来の、考えずに速攻で動く悪いクセのせいもあり(笑)、今のTokyo Greenを設立しました。私にとってはそれほどの場所です。小学生の頃富山市内に住んでおり、マンションのベランダから眺める立山連峰の綺麗さが今も記憶に残っていますが、自分の登山ルーツはもしかしたらその記憶からだったのかもしれません。

雲ノ平山荘が2019年、『ヘリコプター問題』をインターネット記事として公表しました。当時、登山に対する思い出は楽しいことだけの記憶しかなかった私は、日本の登山はこれからも順風満帆だろうと思っていたので、それは衝撃的な内容で『ヘリコプターが山荘に来ない(詳細は雲ノ平山荘ホームページをご覧ください)』、できるなら毎年訪れたい山域になぜそんな問題があるのだ?という不思議さを感じました。山小屋ではもはや当たり前のビール、ケーキ、洋食ランチ。。。そういったものがアルファ米に置き換わるかもしれない、自炊してください、そんなシチュエーション、みなさんはどうですか?

後日三俣山荘の伊藤さんから話を聞いた時に、『食料のみならず、トイレ、燃料、水、通信、電気、これらすべての提供が止まってしまう重大なリスクがある』と聞いた事で、食事だけしか気にしていなかった自分を反省しました。「山小屋が提供するインフラ面は、地方自治体並み」、登山客側としては揃っていて当たり前になっているこれらは、山小屋からすると途方もないコストのかかるものたちなのです。それらが止まることは、山小屋を中心として半径数km以上が荒廃するリスクをも生み出してしまいます。

ちなみに、2019年に雲ノ平へ縦走した際のブログはこちら
https://circle-tokyogreen.com/post-947

そして2020年の新型コロナウイルス問題。あらゆる山小屋さんは、縮小営業、営業中止という死活問題に襲われました。
当時の私は「小屋泊はみんな密だ密だで避けるから、むしろ小屋泊でいい気がする」という、普通の人より捻くれた考えでいたので、ソロで山小屋泊を数回しました。人が少ないことは利用者目線では「快適」なのですが、山小屋さんからすれば営業しないことによる山域への影響などを考慮した上での苦肉の決断だったのではと思います。

2022年年始にNHK BSで三俣山荘さんの特集番組が放送され、2021年の彼らのシーズン中の出来事が放送されました。コロナ禍での小屋の営業へのスタンスや出来事、そして新しいチャレンジに挑もうとする彼らを見て、『チャレンジ精神がすごいな。そして現状を変えたい』という意気込みを感じました。そして、その時に図書室なるものをオープンする予定と知り、いつか訪れてぜひお話ししたいと思いました。
なぜかと振りかえると、やはりあの山域で多くのサークルメンバーと何回も訪れて楽しい思い出を積み重ねてきたことに、自分なりに何か出来ないのか、そう思ったのがひとつの動機でした。
また、山小屋の方達とは山小屋でしか会話できない、という状況から、「街でも話せる」という前面に出てくる状況へと彼らが打って出たことも、何か始めるのだろうか?という時代の先端を歩む気概をも感じ取りました、そして実際2022年の三俣山荘はプロジェクト多数で凄かったわけですが!

でも、そんなに頑張らなくてもコロナ問題が終わればまた元の賑わいに戻るのでは?今の問題は一時的では?、自分事でないから楽観的な見方しか出来なかったわけですが、彼らや、他の山域の山小屋の方達から発せられる声をSNSで見ると、昨年一番感じたのは「山小屋と客とのギャップ」の差が凄まじくある気がしたのです。

三俣山荘
鷲羽岳と三俣山荘
ギャップ

ただの登山が好きならこんなことまったく気にせず明日も山へ楽しみに行くでしょうが、登山コミュニティを運営する私としては、このギャップは知る・埋めていく必要がある、雑誌だけでは知り得ないことを知る必要がある、そう感じ、三俣山荘さんで3泊4日の登山道整備に参加することになったのです。今だから書きますが、決定した時には「マジか!?おぉすご!」という感じです。。。m(_ _)m

ここからは「登山道整備」を、三俣山荘さんが使う言葉の「道直し」として書いていきます。

道直しに参加する前に、三俣山荘の伊藤 敦子さんと何度かお話させて頂きました。
伊藤さんからは、
・三俣の登山道の現状を知ってほしい
・お客さんからの温かい声や、一方の心もとない声
・なぜ登山道が荒れるのか?
・道直しの時間、労力(準備から実作業)、工法
・道への考え、想い、目的、願い。

大きくこの5点についてを聞き、初めて「三俣の現実」を知ることとなりました。詳細に書くことはできませんが、1人の登山客が知る情報としては、スケールが全く違う。スケールという言葉で片付けてはいけないでしょうが、まるで「3000mクラスのギャップの山脈」がそこにはありました。三俣蓮華岳からの心晴れるあの大展望とは違う、現実…

メンバーの頭数さえ揃えれば多少なりとも貢献できるかもしれない、えぇ、生半可でした…
当時の私には、そんな考えが脳裏にあったと思います。
それは伊藤さんも感じられていたと思いますが、でも、そういう「ギャップ」は私だけではなく、山荘と登山客を1:N(無数の登山客)の関係性で考えると、私のようなNに属するの人たちが圧倒的にいるのが、日本の登山の現状なのだと思います。
私だけだったら、ごめんなさい(笑)

数多くのお話の中で、私の記憶にとても残っているのが、
「え〜なんで冷えたビールとケーキが置いてないんだ!!??」
「きゃ!?ズボンが汚れちゃったー」

という声を頂いたことがあるのだそうです。この登山客の言葉と、山小屋の方の間に、私は今回の「ギャップ」の根底を知った気がするのです。みなさんは、どう感じましたか?そして、「あの山荘にはケーキがあるよ!」「あの山小屋ではキンキンに冷えたビールがあるからみんなあともう少し!」と、山行中疲れたメンバーのハートに鞭を打つフレーズとして使っていた私としては、ある種、功罪を感じた気がしたのでした。
ズボンの汚れ、聞いた瞬間「汚れるの当たり前やろ…そんな人いったい山に何しにきたの?」と思うわけですが、この方の根底にあるのは、「登山道は汚れないように整備するのが当たり前でしょ!?なんで木道敷かないの???」という思考なのだろうと推測します。

つづく…

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