Tokyo Green

No Mountain , No Life.

雲ノ平と黒部源流 変わらないもの、変わるもの…

約10分

登山サークルTokyo Greenの登山ブログ Greenの日々。日々とか唄っておきながら週次も月次も越えて年次更新するブログになってしまいました…
Instagramの方が楽なのでついつい長文・駄文を書く事に二の足を踏んでしまいますが、久しぶりに3泊の縦走をしたので、長々と綴ってみようかと。

雲ノ平には3年ぶり、本当は去年のシルバーウィークに予定していたものの雨で双六岳までで短縮してしまい、今回久しぶりに日本最後の秘境に足を運ぶ事となりました。
今年は梅雨の時期が寒かったお陰で、雪解けや花の開花もやや遅くなったようだと事前に聞いており、花の咲いた雲ノ平に期待を抱いて向かいます。

さて、この縦走の前から私の体調には異変。数日前に某アーティストのライブで声を出しすぎた事と汗冷えにより喉を痛めてしまい、病院の薬と龍角散を無駄にザックにしまい込み金曜の夜出発しました。私が車を出さないとメンバー全員の夏休みを無駄にしてしまう為、やや不安な気持ちで新穂高温泉へと向かいます。

ただ運転中は特に眠気も無く、喉の痛みも薬と龍角散のプラシーボ効果で大分改善してきたので、鍋平に着いた時には早く2時間経過して欲しいなぁとヤキモキしながら仮眠します。

この4日間の天気は晴れ予報で、3年前と全く同じシチュエーションに期待一杯にスタートします。駐車場から見える焼岳の姿に懐かしさを覚えつつ…

新穂高温泉スタート!

新穂高温泉を6時にスタート。新穂高には毎年来てしまっている気がします。いい加減マウンテンバイクで走り抜けたい小池新道登山口手前までの歩行も、途中のわさび平小屋に寄るれば一瞬でその煩わしさが消えます。いつも通りに冷えたりんごやトマト、きゅうりを眺めながらこの先の歩きやすい登山道を思い出します。

しばらく食べられない野菜達を手に登山がんばろ〜的な(笑)

ここはまだ標高1200m前後。陽に当たると焼ける焼ける、この暑さから逃れたいが人数8人という大所帯での山行、ペースはコースタイム通りだが、いつのまにか喉の痛みも感じず小池新道を着々と歩いていきます。途中の秩父沢の冷えた水が、みんなを暑さから解放してくれます。

11時過ぎに鏡平山荘に着き、待っているのはかき氷。絶対売れるに決まっている絶妙な位置にある小屋とこのメニュー、快調な私と既に苦しそうな何人かには其々思いが違うかき氷の一杯だったのでは。

そりゃ食べたくなりますよね〜

しかし、かき氷を食べている我々の上は霧に包まれ始まります。持っている雷予報機もピーピー小刻みに鳴り始め、双六小屋着まで待ったなし。
この時期の午後は油断出来ないため少し急ぎ目に抜戸岳分岐へと向かいます。

この段階で既に文字数が多そうで誰も見ないでしょうが笑、このまま。抜戸岳分岐を越えてから後ろを振り返ると抜戸岳山頂辺りが見えたり隠れたりを繰り返す幻想的風景、そして雪見平、黒百合ベンチを越えて見える双六小屋バックの鷲羽岳が…見えたんです!!とりあえず雨・雷に当たらず到着できた初日にみんな一安心。
各々持参した缶ビールや日本酒で乾杯し、初日を締めくくりました。私は埼玉が生んだクラフトビールのコエドビールを2缶、凍らせたペットボトル3本に包み、冷えた状態で飲めることに満足してみんなと頂きました。

いつもここからの展望は、北アルプス最深部の扉と感じます。

…さて、ここから私に異変。

思えばこの行程、いつもテント泊だったのでたまには小屋泊も良いだろうと思ったのがこの3日間災い。とにかく部屋が暑いのと寝苦しい、結局元来の神経質である私には混み入った部屋で寝るのは不可能に近しいと、この3日間で更に悟ったわけです。

翌日3時起床の時には頭痛とちょっとした吐き気に襲われる…最悪です笑 とりあえず水を多めに飲み頭痛薬を飲んで、双六岳山頂での日の出を拝みに向かいます。

少しずつ登ると槍ヶ岳と穂高連峰が綺麗に見え、雲もないこの空の下をまた歩けるのだと思うと喜び反面、この後の体調がやや気になります。しかし、新鮮な冷たい空気のお陰で大分回復し意気揚々と双六岳へ。いつもと変わらないこの風景、双六岳から槍ヶ岳へとまるで続いているような道が訪れる人を感動へと導きます。
今回のメンバーも初めて双六岳からの槍ヶ岳を見て、感動していました。もちろんこの行程はここだけが見所ではありません。

地球を感じると言ったら笑われた・・・

双六岳山頂を後に、三俣蓮華岳へと向かう稜線を進むといきなり眼下はチングルマのお花畑が一面に広がって咲いています!ここからこの稜線はボーナスタイムな道へと変わります。ボーナスタイムとは、とにかく綺麗とか美しいとか言いたいだけです笑 北アルプスで一番歩きやすくて一番綺麗な稜線はここではないでしょうか?

この稜線で天国へ旅立ったと勘違いします

私は花には興味がなく、とにかく目的地に早く着けば良い、早く着く=若さという考えが支配していましたが、こういうチングルマの大群生を見てしまうと少し考えを改めたい、ハクサンイチゲやコバイケイソウなんて今まで口に出してこなかったのが出てくるようになった己が恐ろしい…あとはミヤマキンポウゲなども咲いてたかなと思います。合っているかは自信ありませんが笑

稜線歩きを堪能し三俣蓮華岳に到着すれば、3年前に訪れた雲ノ平が久しぶりに眼下に。通算4回目ともなると、新鮮味よりもまた来た感の方が強くなりますが、周りに見える人工物が小屋しかないのが落ち着きます。遠くは立山、存在感のある薬師岳や黒部五郎岳の百名山が変わらず聳えています(変わっていたら怖いですが)。三俣蓮華岳から降りるとチングルマのお花畑、コバイケイソウの大群生が更に広がっています、今回一番良い山行になったなぁと既にミッションコンプリート感に支配されています。

三俣山荘で軽く休憩をとりながら、丁度ヘリ輸送もあり山荘入口に退避してヘリ輸送の一連を見ます。そういえば登る前日に雲ノ平山荘のオーナーさんがホームページで昨今のヘリコプター事情を赤裸々に載せていたのを思い出しました。ヘリコプターが飛ばなくなったら、飛ばすための経費のしわ寄せが消費者へ来たらどうなるのか?小屋は存続できるのか?ここを歩けるのはヘリコプターによる物資の大量輸送が鍵となっているのは最早事実。ただ歩いて楽しんでいる我々はどう関わるべきなのか、とても考えさせられます。

まさか入り口前で受け取るんですね・・・

さて、雲ノ平への行程は残り4時間。とりあえずランチご飯は雲ノ平で食べるのが目標の為、黒部源流を通って祖父岳経由で向かいます。歩いている最中、花が満開で目のやりどころに困ります。

ついに雲ノ平山荘が目の前に!(意外とここからが遠い・・・)

そして、3年ぶりの雲ノ平山荘へ到着。雲ノ平山荘界隈のチングルマは既に花は終えていましたが、それでもやはり綺麗であることは変わらない。そしてここの食堂では「変わらない私」は、とりあえずパスタとアップルパイでこの日の労をねぎらいました。
午後はやはり雲が広がるも、夜になり気温が下がり雲が消えると、満天の星と飛騨側からの雷光、西の三日月と三光其々の光に大満足。

美味しすぎ!
そうそうこれが見たかったわけです!

夜、小屋のオーナーが雲ノ平山荘を創設したお父様が亡くなられた際に作成した動画を投影されました。話の中で、父だから根付いていた山賊と関係を築け雲ノ平・黒部源流を登山者へ開放できた事、しかしながら昨今の登山事情やヘリコプター問題、日本の国立公園としてのあり方、かなり長い時間をかけて登山者の我々へ語りかけていました。なるほど、確かに国立公園の割に国家の管理を感じず、自治体や小屋が自主的に整備しているのを感じるのはこういう事なのかとよく分かりました。
3年前はこの話は無かったと思います。この3年で日本最後の秘境であるこの場所の状況は、山のあり様ではなく小屋の存亡・登山道整備等の状況について変わり始めているのだと感じました。言葉には出てませんでしたが、危機感を抱いている事がよく伝わります。なお、この日のヘリコプター輸送で物資の充実がだいぶ回復したのだそうです。

チングルマと水晶岳

さて、結局5時間程度の睡眠でしょうか、やはり部屋が暑く半ズボンで過ごして星空を二階のベランダから見たその報いは翌日に。前日の夕食から鼻が詰まって夕食のご飯の味もわからない状況でしたが、翌朝も変わらず鼻水が止まらない笑
自分史上最高の雲ノ平のはずが風邪で台無しになってんなぁ〜と。前日、体調回復してたら一人でまだ未踏の黒部五郎アタックをメンバーに豪語してたもののあえなく断念。

雲ノ平を端まで散策して鷲羽岳を目指す事となり、祖母岳と各庭園をぐるっと廻って、三俣山荘でデポしてから鷲羽岳へ目指します。祖父岳の分岐を越えてからチングルマの大群生がここでも広がっています、もうチングルマも見飽きた!という贅沢な文句。槍ヶ岳とチングルマのアングルがとても素敵です。急登を降りきり、黒部源流を再び今度は登りへと変えると、ついに私は鼻水が止まらない影響で息苦しくなります。僅か30分足らずの登りがこれ程苦しいのは初めて。鷲羽岳は私は無理と判断してお昼に到着した三俣山荘でサイフォンコーヒーで一息つきます。ただ、自分が登らない決断をしたのでみんなも登らない決断に至ったのは申し訳ないですが…三俣山荘の脇を流れる沢の水で少し体を拭いて、3日目の疲れを癒します。

至福の一杯

3年前はUNOのカードゲームで小屋のオーナーのお子さんと遊びましたが、この日は多分居なかったと思いますが、3年もすれば大きくなったのでしょうね。8人でカードゲームを楽しみながらちょっとした懐かしさを思い出しました。
この日は夜は特に外に出ず、これまた熱い部屋の中で寝ます…あんまり寝れてません…

こんな綺麗の朝焼け、三俣蓮華岳分岐辺りで倒れそうなほど苦しかったです・・・

こうして翌朝の最初の登りで、登りが過去最悪にキツイ状況を迎えますが、この日はほとんど降りるだけで、降りるときは苦しさもなく快走。雨に当たることもなかった山行は、過去最高の展望と過去最悪の体調で幕を降ろしました。

3年という月日は、思えば子供の時は特に時間に対する意識なんて全くありませんでしたが、30歳を越えると1歳増える毎に何かの喪失感を覚えます。
山の形は変わらずも、毎年花が咲く時期はズレる事でまた違う楽しみを得られます。満開となる花も同じ場所なのに毎年違うそうです。
一方で人間は体調も変わったり体重も変わったり人生のステージが変化したり等々大小小さな変化があります。

今度雲ノ平へ訪れるのはいつでしょうか、今度はそろそろ縦走中に蓄えるヒゲも白いものが混じってきそうな気がします。
いっそ全部抜いてしまおうか(笑)。次にここへ訪れる時は、今年来た時とは変わっていると感じるものがあるかもしれませんね。
来年だろうが30年後だろうが、ここの展望は永遠に綺麗なままであってほしい、そう感じて4500文字にも渡る長文の幕を切ります。。。

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